●野村・大和、SBIとデジタル証券 不動産など小口売買【イブニングスクープ】(日経
2021年10月14日 18:00 (2021年10月15日 5:21更新))
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUB07DA40X01C21A0000000/

少し前の記事だが、以前、「SBI・三井住友FGのPTSと新たなエンタメ金融の考察」「デジタル証券のシンガポール集中とエンタメファンド」などで書いてきた、SBI・三井住友FG連合のPTS(私設取引システム)の運営会社「大阪デジタルエクスチェンジ(ODX)」が、この11月をめどに35億円の第三者割当増資を実施し、野村と大和も株主に加わる、という内容。
ODXは「大阪金融都市構想」に連なるゲートウェイの位置づけなので(?)、関西人としてこの動きには期待感がある。

ODXはデジタル証券のセカンダリーマーケットとしての発展が期待されているが、各金融機関が揃うことで、「公的なPTSとして運営体制を強化できる」(ODX幹部)とみる、ということのようだ。
なお、デジタル証券(23年めど)に先んじて、上場株(22年春)の取り扱いを始めることになっている。

この記事曰く、野村の参入は、若年投資家層を取り込むため品ぞろえを増やす手段としてデジタル証券に期待しており、三井住友FG傘下のSMBC日興証券や大和は、投資家の注文をODXに取り次ぐことなどを検討している、とのこと。
いずれ、販売力のある野村・リテール部門がデジタル証券の「担い手」として登場してくることになる、というわけだ。

●デジタル証券普及へ国内連合 三菱UFJ信託、SBIと(日経 2021年10月6日 5:00)
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGD051VV0V01C21A0000000/

最初の記事のもう少し以前に、ODXで取り扱うデジタル証券のカストディー業務を三菱UFJ信託が担う、という記事が出ていた。
「三菱UFJ信託はODXに自社のシステム『プログマ』を提供する。具体的には取引されたデジタル証券を誰が保有しているかなどの帳簿を記録する。上場株式の保管業務を手がける証券保管振替機構(ほふり)の機能をデジタル証券で担う構図だ。」(同記事より)

自分が「SBI・三井住友FGのPTSと新たなエンタメ金融の考察」で書いたような、発行企業のマーケティング(なかんずく、ファンマーケティング)に資するようなデータ連携ができるのか、あるいは何らかの保守的な勢力に負けて実現しないのか、今後の行方を見守りたい。

いずれ野村のような大きなリテール基盤を持つ金融側のプレイヤーが、デジタル証券の発行・流通だけでなく、発行体のマーケティングニーズも含めて(例えば、現在の株主優待以上に)かかわることになれば、「新しい金融」は“楽しい”ものになるはずだ。
(このブログに何度も書いてきたように、野村など大きな“組織”ではなく、IFAなど“個人の連携”がこの担い手になれれば、より理想的だと思うのだが)

なお、自分が言う「マーケティングへの援用」は、デジタル証券が期待されていることのメインではないだろう。
むしろ一般的には、これまで証券化商品として取り扱うのが難しかった投資対象(非上場企業の社債、映画版権など)に投資できたり、これまで富裕層だけが対象だったヘッジファンドなどに対し小口での投資を可能にさせたりすることが、その意義として、説明されていることが多いように思う。

とはいえ、自分が希求してきたコンテンツファイナンスの世界が、デジタル証券のSTO→セカンダリーマーケット、という形で帰結する可能性は小さくないと思うし、ファンマーケティングへの援用、という形で「新しい金融」の道が開けていくかもしれない。
さらに言えば、ファンマーケティングに金融側“も”携わるようになることで、NFT(ノン・ファンジブル・トークン)も範疇に入ってくるかもしれない。
(「メルカリ黒字化とIT企業経済圏とNFT。そして『新しい金融』」など。NFTについては、自分ももっと学ばねば)

これまでブログで「(大企業の)オジサンたちは勉強不足」などと偉そうに書いてきたが、そういう自分も、「新しい金融」の可能性を探るためにも、もっと勉強しなければ、と思う今日この頃。