●メルカリが通期で初の連結営業黒字、新規事業とグローバルで成長へ(日経クロステック/日経コンピュータ 2021.08.12)
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/news/18/10988/
メルカリが初めて通期営業黒字を達成したというニュース。
え、ようやく黒字? とは思ったが、大先輩の米Amazonと比べ、ちょうど20年後トレースしているような感じで、なるへそ、と思った。
(Amazon)
-創業 1994年(再設立1996年)
-NASDAQ上場 1998年
-初黒字 2001年
(メルカリ)
-創業 2013年
-東証マザーズ上場 2018年
-初黒字 2021年
※ Wikipediaとネット記事を漁った情報なので、間違いが有ったらすみません
よく、今の30代以下の人の多くは、欲しいものを探すとき、Googleで探すのではなく、最初からAmazonで検索すると言われる。購買者の選択肢にウォルマートやイオンモールは無く、最初からAmazon一択になってきている。
一方、最初からメルカリで物を探す消費者層も出てきているらしい。
Amazonは世界を巨大「Amazon経済圏」で埋め尽くそうとしているわけだが、メルカリも国内外で「メルカリ経済圏」を獲得したがっている。
この経済圏を拡げる方法は、一つはそのサービスプラットフォーム自体を大きくしていくこと(内向きな拡大)。もう一つは、「独自の決済サービス」を設け、そのサービスを他のサービスプラットフォームや実店舗にも広げて行くこと(外向きな拡大)。あるいは、自らのプラットフォーム上で提供するサービスの種類を増やしていく(複合的な拡大)方向性。
昨年の頭に「シンガポールのネット銀行にe-スポーツ企業が参入」や「『金融サービス仲介業』のニュース」で書いた通り、世界中でいろいろな企業が「独自決済」を絡めた「独自経済圏」獲得の取り組みにチャレンジし続けている。
このサービスプラットフォーム上には小口融資やファンド購入などの金融サービスが、ある意味「e-コマースの一部」として提供されている。
このブログで何度となく書いているとおり、今、“金融側”に住んでいる人たちは、彼らに飲み込まれてしまう未来も有るかもしれない。
(かもしれない、ではなく、自分はそう強く懸念している)
この間、「『新しい金融』とシニア金融マン」で参照したように、日本では銀行業・証券業・保険業をまたぐ事業を営む場合、金融サービス仲介業者としての登録が必要になってくる。
参照された日経記事では(既存の金融側の視点で)「スマホ金融」などという、ある意味矮小化された呼称を使っていたが、むしろdポイント(NTT)とPonta(三菱商事・KDDI)を軸に三菱UFJ・大和証券などがどう共存共栄を図り、経済圏化していくか、という取り組みなのだと思う。
メルカリも金融サービス仲介業者への登録に意欲を示していると聞く。
メルカリが「スーパーアプリ」化して金融サービスを提供し、国内外でメルカリ経済圏を拡大していけるかはわからない。
ただ、少なくとも、その方向性でビジネスを考えているであろうことは想像に難くない。
そのメルカリは、今年4月に「メルコイン」という暗号資産の導入を発表した。
●メルコインとは|事業の将来性と仮想通貨市場への影響(Coinpost仮想通貨情報 2021/08/05 18:45)
https://coinpost.jp/?p=264504
上記記事にもある通り、メルカリというサービスプラットフォーム、メルペイという決済サービスとの連携を端から掲げている。
こういう、サービスプラットフォーム+決済+暗号資産・ブロックチェーン、というのは昨今のトレンドでもあって、日本で「スーパーアプリ」化に一番近い(かもしれない)LINEも、暗号資産「LINK」の日本での取り扱い開始を昨年から始めている。
●LINEの暗号資産「LINK」、日本でも取り扱い開始(ITmedia 2020年08月06日 19時36分)
https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2008/06/news155.html
自分の記憶ではLINK構想・サービス開始のニュースは3年ほど前にはすでに目にしていたと思うが(ネット情報を漁ると、2018年8月に発行、とある)、LINKはこれまであまり存在感を示せていない。
実際、LINKを実店舗で決済できる、といったケースはまだ無い(はずだ)。
●LINEの独自仮想通貨LINK(LN)、傘下以外初となる韓国大手取引所Bithumb上場へ(CoinPost編集部注目ニュース 2021/08/11 17:30)
https://coinpost.jp/?p=267888
それでも、上記のようにLINKは海外の暗号資産取引所への上場も決まっているので、行く行くはサービスプラットフォーム+暗号資産・ブロックチェーンという括りでの「スーパーアプリ化」「グローバル決済化」という方向性はあるのかもしれない。
あるいは、そこで見越しているのは「NFT(Non Fungible Token)」特化型のグローバル決済プラットフォーム、なのかもしれない。
と言っても、自分のソースは下記の個人ブログ情報くらいなので、LINEが実際、どう考えているのは分からないが。
●(参考)LINE発行の仮想通貨(暗号資産) LINK(LN)がNFTマーケットβで採用(スノーキー公式初心者のためのFX比較検証ブログ 2021年7月6日・2021年8月13日)
https://snowkeyfx.com/investment-news/cryptocurrency-exchange-news/10205/
「NFT」は、ブロックチェーン上で発行・流通される、何らかの著作物やコレクターズアイテムなどの所有証明書・鑑定書として機能するデジタルデータ(トークン)を言う。
NFTとその裏付けとなる著作物などのアイテムが、きちんと「結びついている」ことが前提なので、アイテムが非デジタルの場合、電子タグを利用するなど、管理についての問題もある。
このNFTについては、今、巷の暗号資産投資界隈では過熱化している(数年前のICOブームのように)。
実際、サギ案件化も懸念されており、マネロン利用への懸念も持ち上がっている(ただし、下記記事のように、個別のNFTの流通量から考えて、大規模なマネロンに利用するのは逆に難しいとも考えられる)。
●NFTはアーティストとミュージシャンだけでなくマネーロンダリングの分野でも注目を浴びる(Techcrunch 2021年4月03日)
https://jp.techcrunch.com/2021/04/03/2021-03-24-nft_users/
LINE同様に、先述のメルコインに関する記事のとおり、メルカリもメルコインを軸にNFTのサービスを創出しようと目論んでいる。
IT各社で、ほかにもGMOなどがNFTサービスを始めようとしている。
●【独占】GMO熊谷正寿 社長を直撃、NFTがなぜ「ブロックチェーンに続く衝撃」なのか?(Fintech Journal 2021/08/12)
https://www.sbbit.jp/article/fj/67378
●NFT特化ブロックチェーン「パレット」開発のハッシュポートが前澤友作氏より4.8億円調達、同氏と共に新サービス提供予定(Tech Crunch 2021年8月03日)
https://jp.techcrunch.com/2021/08/03/hashport-fundraising/
さて、NFTという呼称が“buzz word”化しているが、コンテンツなどの具体的なアイテムという“資産”をブロックチェーンのトークンとして発行し流通させる、という取り組みであれば、上記新規参入者に限らず、例えばNTTデータや富士通といった大企業も取り組んでいるし、
●NTTデータがBlockTrace事業を開始──証券・アート・不動産をトークン化(Coindesk Japan 2021年 3月 16日 13:33)
https://www.coindeskjapan.com/102583/?utm_source=yahoo&utm_medium=news&utm_campaign=ynrec
あるいは、このブログで何度か言及してきたSBI・野村証券・Boostry(「STOとアイドルファンドと徳の経済」 )のブロックチェーン上の取り組みにしても、SBI・三井住友FGのデジタル証券PTS(「SBI・三井住友FGのPTSと新たなエンタメ金融の考察」)にしても、そのトークンが流通する過程において、一部のトークンはNFTそのものなのかもしれない。
正直、自分は厳密な意味でこれらの違いを理解していない(とはいえ、今のところ「NFTはセキュリティ・トークンには該当しない」と認識している)。
記事の、GMO熊谷社長の下記コメントにもある通り、NFTで期待されている機能は、クリエイターへの還元だ。
「・・・書籍を例にしてみます。Amazonや紀伊国屋書店などの1次流通の書店で購入された書籍については、当然ながら収益が著者や出版社に入ります。
しかし、ヤフオクやブックオフなどの2次流通になると、たとえ書籍が購入されても、今のところ著者や出版社に収益は入りません。2次流通以降では、著者など書籍を創る立場の人たちは蚊帳の外に置かれ、収益機会を逃しているのです。
これがNFTを利用することによって、2次流通以降の書籍購入に対しても、著者や出版社に収益が入るような設計が自由にできるようになります。NFTは、「この書籍がまさにいま購入された」ということを、2次流通以降も証明するものだからです。」
自分は長らく、コンテンツファイナンスを志しているし、その根源にはクリエイター・ファーストの思想が有る。
(「『コンテンツ・イズ・キング』と『天下の秤』」)
だから、クリエイターが作ったコンテンツからの収益機会が増える世の中の到来は、非常に望ましいことに思う。
一方、例えば、カネになる映画とならない映画に厳然たる差異があるように、あるいは(古いが)アイドルのブロマイドに人気化するものとしないものとがあったように、NFTだからといって、儲かるか、と言うと決してそうではない。
むしろ、ほとんどの案件が儲からないと言っても過言ではなかろう。
「全国総クリエイター時代」の世になったとて、そこで評価され人気化する人物・コンテンツはごくわずかだ。
(実は、元々、自分がビジネス化を目論んだ「スラマット(Selamat!)」の狙いは、そういった玉石混交するクリエイター・アーティストの評価軸を、他者からの応援(広告)により数値化・可視化したい、ということでもあった。<2021/8/16追記>さらに、応援する側も数値化・可視化される構造だ(以上、追記終わり))
それでも、一握りの“評価に値する”人物・コンテンツ由来のアイテムには、コレクターズアイテムとしての価値が間違いなく発生する。ファンを集める“吸引力”が有るからだ。
そして、NFT(あるいはこの手のデジタルトークン)には、その“吸引力”を利用した別の可能性が有るのではないだろうか。
先述のとおり、自分にはNFTとセキュリティ・トークンの線引きはまだ不明だが、このブログにも何度も書いているように、自分は、「企業マーケティングとしてのアーティストのイベント開催など」と、アーティストのファンを“投資家”として活用するSTO的なファンマーケティングが、これからの「金融マン」側の新領域に広がっている、と考えている。
(「SBI・三井住友FGのPTSと新たなエンタメ金融の考察」「オリラジとポケモンとSTO(雑記)」など)
つまり、飛躍した話をすると、NFT流通(マーケットプレイス)事業は、デジタルアイテムの流通(e-コマース)、同アイテムを裏付けにするトークンの流通(金融)、そして、企業スポンサーの導入とファンマーケティング(広告)という、複合的な領域に広がってくる可能性が有る・・・妄言で恐縮ですが。。
こういった領域を、「スーパーアプリ」を志向するe-コマース・IT企業が担うのか、D通のような広告ビジネスが担うのか。それとも、“古い”“変われない”と言われ続けている金融側が担うのか。
自分としては、「新しい金融」の一つの姿になってほしいと願っている。
企業と資産運用や資金調達で結びついている金融側の、特に“富裕層金融ビジネス”の営業マンが、顧客である(例えば)中堅企業オーナーに、こういったサービスを提案・提供する、という流れだ。それも、できれば組織に従属しないタイプの金融マンにこの役割を担わせたい。
最後の「NFT(?)の別の可能性」についてはやや飛躍してしまったが、我々「金融マン」は(自分がいま、金融マンと言えるかは別にして)、メルカリやGMOなどの動きも含め、アンテナを張り、「新しい金融」の在り方を“ぐるぐると”考えておく必要があるだろう。
<追記 2021/8/19>
NFTの法的位置づけ、解釈について弁護士の先生方がまとめていたページが有ったので参照しておく。
●NFTに関する法的考察~アート、ゲーム、スポーツを題材に~(幻冬舎GOLDオンライン TMI総合法律事務所ニューズレター 2021/8/19)
https://gentosha-go.com/articles/-/35826
当方が考えているような、スポンサード付きのデジタルアイテムの発行や流通、といった可能性も、特に問題ないように感じた。
拡大解釈だけれど、記事内のNBAの各球団が売るNFT(+デジタルアイテム)の事例も、スポンサード・アイテムと言えなくもない。
(ただ、こういったケースの場合は、今の認識では金融側の関与は必要ないのだろう)
<追記 2021/8/20>
もう一つ追記。NFTそのものについては以下記事が参考になった。
●デジタル資産「NFT」の作り方と取引方法【北米版】(Coindesk Japan 2021年 3月 25日 20:00)
https://www.coindeskjapan.com/102366/
<追記 2021/8/31>
●楽天、来春NFTに参入 コンテンツホルダーがNFT発行できる「Rakuten NFT」提供へ(Yahooニュース 8/31(火) 11:56)
https://news.yahoo.co.jp/articles/ed7c5ccc44fc58e0c12fa230ed599694f7ef87ed
すでに国内に大きな経済圏を持つ楽天もNFTに参入。記事にある通り、ヤフオクでも取引が始まるようだ。
“クリエイティブ”な“個”が以前より大きな価値を持つ時代が到来している。
[…] <2021/8/27追記>ちなみに、前の「メルカリ黒字化とIT企業経済圏とNFT。そして『新しい金融』」で参照したように、Pelette開発のハッシュポートは前澤友作氏より4.8億円調達し、同氏と共に新サービスを提供予定だそうだ。(追記終わり) […]
[…] 今回のデジタル証券としてのエンタメ、という流れは、横の広がり(グローバル)も縦の広がり(ファンマーケティング)もある。 さらに、NFTにも話を拡げれば、クリエイティブ側への還元という流れも後押しされてくる(「メルカリ黒字化とIT企業経済圏とNFT。そして『新しい金融』」)。 簡単にブームで終わってほしくはない(ブームすら起こらないのはもっと寂しい)。 […]
[…] 自分はこのブログで常々、「古い金融はe-コマースに飲み込まれ、その一つのセクターになってしまう」かもしれない、などと書いてきた。 (2021年8月15日『メルカリ黒字化とIT企業経済圏とNFT。そして「新しい金融」』、2021年8月2日『「新しい金融」とシニア金融マン』、2020年1月28日『「金融サービス仲介業」のニュース』、2019年12月29日『みずほとソフトバンクの情報銀行に思う(乱文)』など) […]
[…] (例)●2021年8月15日 メルカリ黒字化とIT企業経済圏とNFT。そして「新しい金融」等々。 […]